はっきり言って僕は今は家を買うタイミングとしては最悪のタイミングだと思っています。
巷で騒がれている「低金利」にあおられてはいけません。
低金利だから家を買う。
それはあまりにも単純すぎるのではないでしょうか?
もっといろんなことを複合的に考える必要があります。
__というわけで今回は「持ち家問題」をテーマにしてみたいと思っているのですが、その前にはっきりさせておかなければならないことがあります。
それは、「お前は持ち家派なのか?」ということです。
僕は持ち家派です。
でも、僕の場合は「半分」持ち家です。
は?
僕が持っているのは、「建物」だけです。
土地は借地。
つまり、僕は『定期借地』で家を建てたのです。
妻とも相談し、いろいろ考えた結果、僕たち家族はこのやり方でいくことに決めました。
目次
スポンサーリンク
僕が「定期借地」にした理由
定期借地の最大のメリットは、土地代のことを考えなくてもいいということです。
みなさんが毎月、銀行に支払ってる住宅ローン。
あの中には、「建物代」と「土地代」の両方が含まれています。
でも、定期借地の場合、土地代は払わなくて済むので、建物代だけのローンだけで済みます。
だから、定期借地にした場合の住宅ローンの月々の返済額は恐ろしいくらいに安いことになります。
でも、ここで一つ疑問が残ります。
- 銀行には払ってないかもしれないけど、その代わり、地主さんに借地料を払ってるんじゃないの?
__という疑問です。
おっしゃる通りです。
借地契約を結んだ以上、地主さんには借地料を払わなければいけません。
でも、その金額を聞いたら、きっとみなさんはびっくりされると思います。
借地料というのは驚くほど安いのです!
それは大昔にできたある法律のおかげです(それについては後で触れます)。
借地にするメリットはまだ他にもあります。
ざっと挙げると、
- 借地料には金利が含まれていない
- ↑ だから今後、金利が上昇してもその影響を受けない
- 土地の固定資産税を払わなくてもいい
- 広い土地を使用できる
- 立地のいい場所に上物を建てることができる
- etc
__こんな感じになります。
「家がほしい!」という気持ちは理解できます。
でもそこには「建物代も、土地代も含まれている」ということを忘れてはいけません。
僕が「新興住宅地」を見て思うこと
僕が暮らしている北海道の地方都市でも、『新興住宅地』がいっぱいあります。
そこではハウスメーカーが建てたオシャレな家がズラーっと並んでいます。
もちろん、その姿は美しいです。
でも、それら一軒一軒の家は、3,000万円とか、3,500万円とかするんです(東京とかだと、もっとするんでしょ?)。
3,500万円って、相当な金額ですよ。
しかも、それに金利もプラスされます。
固定資産税もプラスされます。
保険料も、修繕費もプラスされます。
それらを含めると、毎月の家計への負担は相当なものになることでしょう。
それでも、「家を建てたい!」という人が後を絶ちません。
この人々の「持ち家欲求」は、いったいどこから来るのでしょうか?
そこには政府の陰謀のようなものがあったという人もいます。
つまり、人々に『持ち家幻想』みたいなものを植え付けることによって、「内需を歓喜させよう!」という政府の思惑があったというのです。
僕はこの説がかなり有力だと思っています。
スポンサーリンク
国民が「持ち家志向」へ傾いていった歴史的背景
戦前の日本で「自分の家を所有している」なんて人はほとんどいませんでした。
不動産というのは、ごく一部の人しか持っていないものだったのです。
そういう人というのは、「高等遊民」などと呼ばれたりしていました。
よく夏目漱石の小説に出てきます。
彼らは人に土地や家を貸し、その人から借地料や借家料をもらって生活していました。
今、僕がやってることと同じようなことをやっていたのです。
インカムゲインってやつですね。
しかし、1941年に「地代家賃統制令」というものが発行され、事態は一変します。
この法律によって、地主や家主は地代金や家賃を好き勝手に上げることができなくなってしまったのです。
このおかげで「土地や家を所有していても大して儲からない…」という事態に陥り、地主や家主はどんどん土地や家を売却するようになったのです。
折しも、戦後の復興の影響で地価は急騰。
- この高い時期に建物を壊して更地にして売っぱらっちまおうぜ!
__という動きが全国で加速したのです。
立ち退きを専門にやる人まで現れ、日本各地で家を追い出された人々があふれました。
キャプタルゲインってやつですね。
困ったのは日本政府です。
街には浮浪者があふれ、社会は一気に不安定になりました。
そこで出来た法律が、もうみなさんすっかりお馴染みの「借地借家法」という法律です。
これは入居者を保護する目的で制定されました。
これにより、無理な立ち退きや追い出しができなくなりました。
さあ、今度は地主さんや家主さんたちが困る番です。
家賃も上げられない。
かと言って人も追い出せない。
入居者に居座られ続けると、建物も取り壊せない。
でも更地にしないと、売れない。
__かくして、夏目漱石の小説に出てくる高等遊民たちは日本から姿を消してゆくことになるのです。
スポンサーリンク
なぜ、みんなバカみたいな高い値段で不動産を買うのか?
高等遊民なきあと、頭角を現したのがサラリーマンや公務員たちでした。
もうその頃には「住む場所というのは人から借りるもの」という概念が崩壊していました。
ちょうど日本は高度経済成長期の真っ只中。
「払っても払っても自分のものにならない家賃を払うなんてムダだ!」をスローガンにみんな持ち家志向へと傾倒していきました。
持ち家比率は60年代の後半には賃貸を完全に逆転。
日本各地に『マイホーム』の建設ラッシュが起こりました。
喜んだのは政府と企業です。
これにより政府には税金が、企業には利益が入ってきます。
住宅金融公庫が組織され、「住宅ローン」というものが誕生するのもちょうどこの頃です。
家を建てたご主人は、『一国一城の主』などと呼ばれ、マイホームを持つことがある種の日本人のロールモデルとなりました。
__その時のメンタリティーは今も続いています。
みんながバカみたいな値段で家やマンションや家を購入するのは、このある種の「ステータス」のせいなのです。
スポンサーリンク
まとめ
僕は不動産の世界に身を置いている人間ですから、多少はみなさんよりも鼻が利きます。
そんな僕が今、感じていることはある種の「空恐ろしさ」のようなものです。
銀行の住宅ローン窓口には、たくさんの人が列をなしています。
なんせ、史上空前の低金利です。
住宅ローンの金利も1%を切っています。
だから、「この機を逃してなるものか!」とばかりに銀行の窓口に駆け込むみなさんの気持ちもわからないでもありません。
だけど、冷静に考えてみてほしいのです。
今は本当に絶好のタイミングなのでしょうか?
金利はこれから上がってゆくかもしれないのです。
今の世界経済を見ていると、いつ金利が上がってもおかしくない状況です。
3,500万円というのは相当な額ですよ。
しかも、それを35年に渡って返してゆくという…。
大丈夫でしょうか?
投資家のウォーレン・バフェットはこんなことを言っています。
みんなが貪欲な時に恐怖心を抱き、みんなが恐怖心を抱いている時に貪欲であれ。