不動産というのは、「土地」と「建物」の2種類がありますよね? 個人で所有している物件を、自分が設立した会社に売却する、といった場合、通常は土地と建物の両方とも売却するのが一般的です。
しかし、『建物のみを売却する』というやり方もあります。土地は個人のままにしておき、会社は土地の所有者(つまり、自分自身)に『地代』を払うのです。
個人所有の物件を自ら設立した会社に売却するだけでも珍しいのに、そのうえにさらに土地と建物と分けて売却するなんて…なんだかとても複雑なことをしているような気がしてきます。
だけど、それほど難しいことではありません! そして、これをやることよって、『メリット』が生じるのです。あまり一般的ではありませんが、自分所有しているアパートの建物だけを会社に買い取らせている大家さんはいます。
…今回の記事は、個人所有の不動産のうち、『建物』だけを自ら設立した会社に売却することによるメリットと、デメリットについて解説してみたいと思います。
目次
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個人所有物件の建物のみを自ら設立した会社が購入する場合のメリット
建物を所有すれば、必ず減価償却というものをしなければなりません。減価償却をすると、必ず『未償却残高』というものが残ります。…この金額が「帳簿価額」とも呼ばれるもので、これが『税務上の時価』とされています。
新設会社は未償却残高で建物を購入するわけですから、非常に安い金額で物件を取得することができます。さらに土地を取得する必要がありませんので、土地部分に関しては借金をする必要はありません。
土地の所有者でもないので、固定資産税もかかりません。このやり方を採用しますと、もちろん「借地料」は発生してきます。だけど、土地分のローンの支払いや、固定資産税のことを考えたら、負担ははるかに軽いといえるでしょう。
この「建物のみを会社が買う」というやり方の最大のメリットはここです。収入と支出のバランスを考えたときに、このやり方を採用すると、毎月のキャッシュフローはかなり良いものになるのです!
たとえ、建物部分を取得するために銀行借入を利用したとしても、土地代はローンに組み込まれていないので、銀行への毎月の返済額はかなり低く抑えられるのです。これによって、新たに設立した会社は、非常に安定した売り上げを確保することができます。
また個人としても、収入を分散させることができるので、所得税・住民税対策にもなります! 日本は累進課税制度なので、所得の高い個人はどんどん税金を払うことになってしまいます。
所得を自分で作った会社に分散させることができれば、節税効果が生じます。自分のフトコロにお金が入るのも、自分で設立した会社のフトコロにお金が入るのも、結果的には同じことだからです!
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個人所有物件の建物のみを自ら設立した会社が購入する場合のデメリット
自ら設立した会社が取得するのは、建物だけです。では、土地はどうなるのか? といえば、土地は『賃借する』ということになります。
要するに、法人が借地人となり、土地の所有者(つまり、あなた)に借地料を払う。…というわけです。
このとき、法人は『借地権』という権利を取得することになり、土地の所有者にその対価(権利金)を支払う必要が生じてきます。もしも権利金を支払わない場合、「借地権を無償で贈与した」とみなされる可能性があります。
…そうなると、ちょっと厄介です。ヘタをしたら、税金をさらに課税される恐れがあります。
また『月々の借地料の相場』もきちんと調べる必要があります。もちろん地代金は、その付近の相場に合わせた金額にしなければなりません! いくら自分で設立した会社とはいえ、個人と法人は別ものです。相場とかけ離れた借地料は認められません。
会社は借地料が安いほど儲かることになります。今度、借地料が高くなってしまうと、『所得の分散効果』が薄れてしまいます。所得が分散されることによってはじめて節税の効果が出てきます。個人の不動産所得を分散させるためには、あまり地代金を高くしない方がいいのです。
…この辺はバランスを考慮しなきゃいけません。日本は累進課税制度なので、収入が高くなればなるほど払わなければならない税金も高くなっていってしまいます。
せっかく税金対策のためにはじめたのに、節税効果が薄れてしまっては何にもなりませんから、この借地料の設定に関しては十分に考える必要があります。