昨日、僕は韓国映画『あなた、その川を渡らないで』という作品を紹介しました。
同じく「夫婦の愛」を扱った映画で、もう一本素晴らしい作品があります。それは『ブルー・バレンタイン』という映画です。
こちらも夫婦が主役。でも、この二つの作品は何から何までが対極に位置しています。
あちらが「陽」なら、こちらは「陰」。あちらが『スラムダンク』なら、こちらは『バガボンド』です。
__でも、本当に素晴らしい映画なのでぜひ観てください! ただし、一人で(笑)
目次
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作品概要
- 監督:デレク・シアンフランス
- 出演:ライアン・ゴズリング/ミシェル・ウィリアムズ/ジョン・ドーマン/マイク・ボーゲル/フェイス・ウラディカ
- 上映時間:112分
- 公開:2010年/アメリカ
『ラ・ラ・ランド』や『ドライブ』などですっかりお馴染みのライアン・ゴズリングと、『マリリン7日間の恋』で知られるミシェル・ウィリアムズというすごい二人が夫婦役を演じた話題作。
アカデミー賞やカンス映画祭、ゴールデン・グローブ賞など世界各国の映画祭に出品され大絶賛されました。
低予算でありながら異例の大ヒットを記録し、当時無名だった主演の二人を一躍スターダムへと押し上げました。
『ブルー・バレンタイン』はあるカップルの出会いから結婚、そして破局までを「行ったり来たり」しながら交互に描いていきます。その行ったり来たり演出があまりにも残酷で、残酷で…。
ラブラブのシーンのあとに、愛が冷めきった二人のシーンが来たり、結婚式のシーンのあとに別れのシーンが来たり、etc__。だんだん真綿で首を絞められるような気分になっていきます。
そして、最後は土手っ腹にズドーン!と来ます。
これは絶対に一人で観なければいけない映画です。よっぽど夫婦関係に自信のある方なら一緒に観てもいいかもしれないけど。たぶんご主人や奥さんと一緒に観たら後悔するやつです、コレ!
いいですか、僕はしっかり忠告しましたよ。奥さんやご主人と一緒に観て、その後どうなっても僕には責任持てませんからねー(笑)
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レビュー
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、
共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、
愛を誓い、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?
__結婚する時、誰もがこう誓ったはず。でも日本で離婚する夫婦は3組に1組。しかもその割合は年々増加傾向にあると言われています。
男と女が別れるとき、そこにはいったい何があるのでしょうか?それは永遠の謎。
あんなに愛し合っていたのに。あんなに心の底から好きだったのに。
- 一体いつから愛は冷めてしまった?
- 一体どこで歯車は狂いはじめた?
- 一体どこで間違った?
- 一体どこに問題があった?
それは誰にわからない。
ただ一つ言えることは、
- 二人はかつて、確かに心の底から愛し合っていたんだ!
__という事実があるだけ。
「かつて」というエクスキューズがつくけど…。
この映画の主役の二人は「僕」であり、「あなた」である
『ブルー・バレンタイン』ではひと組のカップルの出会いと別れが交互に描かれます。
それは映画やドラマ、小説などで延々と繰り返されてきたテーマ。いわゆる「ラブ・ストーリー」ってやつです。
でも、この映画で描かれるラブ・ストーリーはそんじょそこらのラブ・ストーリーとは訳が違います。
あまりにもリアル。あまりにも壮絶。
画面に映し出されているのは間違いなく僕であり、僕のとなりにいる人です。あなたであり、あなたのとなりにいる人です。
ライアン・ゴズリング演じるディーンは子煩悩な塗装工。ミシェル・ウィリアムズ演じるシンディは優秀な看護師。
「格差婚」という嫌な言葉が流行っていますが、間違いなくこの二人にはこの言葉が当てはまります。
それでもいい、と夫のディーンは思っています。
- 愛があればそれでいいじゃないか
- 愛する妻と愛する娘と一緒に暮らせればオレはそれだけで満足だよ
- お金とか社会的地位なんてどうでもいいことさ
- 「見てくれ」だってどうだっていい
__かつてあんなにカッコよかったはずのディーンは、今ではすっかり頭が禿げ上がり、ビールっ腹の中年オヤジになっています。
シンディはそんなディーンに幻滅しはじめています。
すっかり冷え切った関係。
本当はディーンもそのことに薄々気づいています。気づいているけど、現実から目を背け続けています。
男はいつでもロマンチスト
僕はこれほど恐ろしい映画はないと思っています。
僕たちはこの映画から問いかけられます。
- お前んところはどうなんだい?
__と。
どう考えたって、この映画の主人公二人と自分たちとを「別もの」として捉えることはできません。「オレには関係ない話だ」と突き放して、客観的になんて観れない。
これはSFでもなければ、冒険活劇でもない。あの二人は僕たち自身なのですから。
男はいつもロマンチストです。でも女性はそうじゃない。そうじゃないのに男は女性も自分と同じようにロマンチストなはずだ、と勝手に決めつけています。
でもそれは大きな大きな勘違い。男性が勝手に作り上げたフィクション。
女性は極めて現実的です。男みたいに「もやっとしたもの」だけでは生きられないのです。
僕はそのことを(数少ない)女性とのお付き合いの経験から学んできました。
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ある日、女性が突きつけてくる恐ろしいものについて
それはお金かもしれません。それは職業かもしれません。それはルックスかもしれません。それはファッション・センスかもしれません。
それは「太った」とか、「禿げた」とかという愛とは本来何ら関係のないはずのものであるかもしれない。あるいはもっと本質的なことなのかも…。
でも、そういう「ちょっとしたこと」って女性にとってはすごく大事なことだったりするんです。
男は願っています。できれば女性にはそんなこと探求して欲しくないって。だけど、それは避けて通れないことなんです。
そしてある日、男は突然、女性から本質的なことを突きつけられるんです!
この映画はそのことを描いています。こんな恐ろしい映画はありません。どんなホラーよりも怖いです(笑)
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「愛があればお金はいらない」なんて大嘘だ!
子供はパパのことが大好き。ディーンも子供がいることがアドバンテージだと思っています。
だけど、シンディの悩みはもっと深刻です。それはもう子供がいるから解決できる、といった種類の悩みじゃない。
最悪の状態のディーンとシンディ。
でもそんな二人にもラブラブの時期はあったんです。
二人が恋に落ち、結婚に至るまでの過程は本当にロマンティックに美しく描かれます。まさにそれは『ラ・ラ・ランド』に匹敵する美しさで描かれます。
ディーンは確かに学もなく、低所得の職業にしか就けない青年です。だけど、とてもハンサムで、ハートは超優しい!
シンディはそんなディーンに惹かれて、両親の反対を押し切って結婚します。父親の「やめとけ! お前とはあまりにも何もかもかけ離れすぎている。あとで苦労することになるぞ!」という忠告も聞かずに…。
シンディは医学部に通い、難しい試験をパスして見事に正看護師になりました。だから自分のまわりにいるのは超大金持ちのお医者さんばかり。
- 職業で人の価値を決めてはいけない
__もちろん、シンディだってそれはわかっている。
でも…。でも、どうしてもディーンから心が離れていってしまうのを止めることができない…。
あんなに愛し合っていたのに…
ディーンはウクレレをいつも持ち歩いていました。そしてシンディにいつも素敵なラブ・ソングを歌って聞かせてあげます。
学もなく、何の資格もなく、社会的地位もないけど、愛する人のためにとっても素敵なラブ・ソングを歌ってあげることはできる。
それじゃ、ダメですか?
人はいつだって愛する人を傷つけてしまう
傷つけちゃいけない人を
大事なバラを摘もうとして
花びらを散らしてしまう
__ディーンはミルズ・ブラザーズの『人はいつも愛する人を傷つける』(59年)という古いラブ・ソングをふざけてエルビスっぽく歌って聞かせます。
楽しそうに笑い転げるシンディ。「かっこいいわ!」と、うっとりした目でディーンを見つめるシンディ。
ディーンのウクレレに合わせて今度はシンディがふざけてタップ・ダンスを披露します。
愛し合う若い男女の微笑ましい姿。無邪気。最高にロマンティックで、最高にチャーミングで、最高にハッピー!
その数年後に最悪の結果が二人を襲うことになるなんて…。
何も知らない二人。恋は盲目。
この映画の最後の残酷さと地獄絵図は、もう言葉にできません…。
- オレたち、あんなにうまくいってたじゃないか!
- 神の前で誓っただろ。健やかなる時も病める時も助け合うって!
- 今がその、病める時だ!
- オレに最後のチャンスをくれ!
__シンディにすがりつくディーン。
だけど、女性の心はそんなことでは変わりません。
ディーンは最後の最後まで幻想に囚われていたのです。
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まとめ
結婚はゴールじゃない。結婚しただけですべてが完了したと思ったら大間違いです。そのことを僕たちはこの映画から学ばなければなりません。
僕も気をつけなければいけない。今のところ僕の奥さんは僕のことを愛してくれている(ん、愛してくれているよね?)
でもご主人はそのことに安心しきっていたらダメなんです!
- 婚姻届にハンコを押したから
- 子供が生まれたから
- 家を建てたから
__でも、それとこれとは別なんです。
それは何のアドバンテージにもならない。すべてのご主人はそのことをきちんと把握しておかなきゃいけないんです。
奥さんの心が離れてしまう前に。
あなたとあなたの隣にいる人が、ブルー・バレンタインを迎える前に。
したっけ!
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