不動産投資をやるにあたって、『銀行融資』というのは非常に重要で、なおかつ厄介な関門です。
でも銀行の審査がすんなり通って低い金利で融資してくれるとなったとしても決して安心してはいけません。
いま、巷では『不動産投資はイールドギャップさえしっかりしていればOK』という考え方が蔓延しています。
でも僕はその考え方に疑問を持っています。
『イールドギャップ』とは投資利回りと借入金利との差のことです。
だから「投資利回りが多少低くても借入金利も低ければいいだろう」という考え方が蔓延しています。
実際、そのように考える人が多くなってきています。
僕はこれほど危険な考え方はないと思っています。
不動産投資は銀行から借金をするところから話がはじまります。
株式、投資信託、FXといったいわゆる『紙の資産』への投資と不動産投資の最大の違いは「銀行のお金を利用できるか・できないか」ということです。
銀行は不動産の購入資金にだったら喜んでおカネを貸してくれます。
でも紙の資産の購入資金にはおカネを貸してくれません。
銀行は「不動産には担保価値がある」と見ています。
いざとなったら、不動産を差し押さえて売却すれば回収できるからです。
だから銀行は不動産の購入資金のためだったら融資してくれますが、株の購入資金のためには融資しないのです。
投資と銀行は切っても切れない関係です。
だから銀行と良い関係性を構築できなければ不動産投資で成功することはできません。
「全部、自己資金で不動産を買う」という人もなかにはいるかもしれないが、それはごく一部の大金持ちにしかできない芸当。
僕らみたいな一般人には実現不可能なやり方です。
でも、いくら銀行のお金を使って資産を手に入れることができるからといって、『借りすぎ』には注意しなくてはいけません。
僕は基本的には『レバレッジ』というものを否定しません。
レバレッジは間違いなくパワーであり、エネルギーであり、魔法です。
上手に使いこなすことができればものすごい恩恵をもたらしてくれるものです。
不動産投資は借金というレバレッジを使うことができます。
その魔法を使って大きな富を得ることができる素晴らしいものです。
でもレバレッジは諸刃の剣なのです。
そのことは事前にきちんと把握しておかなければいけません。
フグの料理はうまいかもしれません。
でもフグには毒があるのです。
調理するときには十分それを把握し、きちんと適切に処理しなくてはいけません。
不動産投資における借金もそれと同じです。
きちんと適切に処理しなければ大きな災いをもたらす危険性を秘めています。
不動産投資関連の本の中には「フルローンでいい」とか「オーバーローンでも大丈夫」というようなことが平気で書かれています。
それはとても恐ろしいことのように僕には思えます。
いくら銀行からの借入利息が低いからといって、パフォーマンスの悪い物件(利回りの低い物件)を自己資金なしで取得してもいいなんて・・
とても正気の沙汰とは思えない。
いま、不動産投資はちょっとしたブームになっています。
何と言っても今は史上空前の超低金利時代だから。
「いま借りどきでしょ!」という具合に多くの人が不動産投資の舞台に上がってこようとしています。
そのおかげでどんどんレッド・オーシャンになってきています。
需要が増えるとモノの値段というのは上がっていきます。
だから今、不動産価格が高騰しているのです。
これは極めて危険な兆候だと思っています・・
不動産投資と紙の資産への投資は全然違うもの
銀行の不動産に対する貸出残高はあの80年代のバブルを超えたとも言われているよね。あの時、あれだけ痛い目に遭ったのに舌の根も乾かないうちにまた同じ過ちを繰り返そうとしているのです。
借りる方も借りる方だけど、貸す方も貸す方。
僕は多くの人が今、我先にと舞台に上がろうとしている。
僕はこの現状を冷ややかな目で見ています。
まあ、マクロ的な視点で見れば銀行が不動産の購入資金に積極的に融資したがる理由、わかるけどね・・
不動産以外に貸すところないもんね。
デフレ不況でいい会社はみんな借り入れを控えているし・・
僕は何年も不動産の世界で生きているけど、はっきり言って不動産というのはかなり手強い相手です。
取り扱う金額も大きくなりがちだし、人とモノの両方を相手にしなければいけない。
おまけに自然現象の影響もモロに受ける。
『資産運用』という言葉は非常に聞こえのいい言葉です。
しかし、不動産投資は金勘定だけ上手ければ成立するようなものでは決してありません。
紙の資産と同じような感覚でやりはじめるとエライ目に遭うでしょう。
しかし今、不動産投資に殺到している人の様子を見ていると明らかに彼らは不動産投資と株式や投資信託などを「同じもの」として捉えているようなフシがあります。
その無邪気で無防備な姿に時々ゾッとすることがある。
三角の形をした入れ物に必死になって四角い形をしたものを入れようとしてもうまく入らないもの。
金融資産と現物資産は違うということ。
紙の資産と不動産は違うということ。
お金を貸す人がいて、お金を借りる人がいる。
そしていつの時代も痛い目を見るのはいつも「お金を借りる立場の人間」だ。
この辺りの貸す側・借りる側のパワー・バランスは『ナニワ金融道』にも描かれてるし、『ウシジマくん』にも描かれてる。『金色夜叉』にも描かれるし、ドストエフスキーの小説にも描かれているよね。
不動産投資に興味を持つのは大変に素晴らしいことだよ。
銀行から借金をする行為も全然悪くはない。
でもだからと言って『飛んで火に入る夏の虫』や、『鴨がネギを背負ってやって来た』にだけはならないように気をつけなければならない。
史上空前の超低金利時代で銀行も不動産にだったら積極的に融資してくれる。
ただそれだけの理由だけで踏み入れるにはあまりにも不動産の世界は危険すぎる。
フグはとても美味しい魚だよ。
だけどフグには毒があることも忘れてはいけない。
その毒は人間を死に至らしめるくらいの猛毒なんだ。
そのことをしっかりと認識したうえでフグを調理し、食してほしい。
僕は実際に悲劇を迎えた大家さんを何人も見てきたよ。
不動産会社の営業マンをやっていればそういう悲劇を迎えた大家さんを目にするものだ。
はっきり言って不動産の世界はおっかない世界なのだ。
「ちょっとしたお小遣い稼ぎを・・・」なんて軽い気持ちでスタートするとエライ目に遭うよ。
投資利回りが高ければ金利の上昇や修繕費のマイナスをカバーできる
あくまでも重要なのは『投資利回りの高さ』だと僕は思っているよ。
要するに儲けをいっぱい出せということ。
ラーメン屋の店舗数が多いからといって、それがイコール「儲かってる」とは限らないんだ。
お店の数が増えればそれだけたくさん経費がかさむということだ。
人件費だってバカにならないし、銀行からの借入金の額も膨らむ。
不動産投資(アパート経営)だってそれと同じことが言えると思うよ。
安定するためにはある程度の『棟数』や『スケール』が必要であることは間違いない。
でも、だからと言って身の丈以上の借金をしていいわけじゃない。
たくさん銀行から借金をするということはそれだけ毎月の支払額も増すということ。
その他にも修繕費もかかるし、業者に払う広告料もかかる。
固定資産税もバカにならないし、家賃を滞納する入居者も出てくるだろう。
それやこれやをいろいろ差し引いたあと、さて、いくらのお金が手元に残るのか?
それが不動産投資の最大のキモの部分。
無茶な融資をしたツケは必ずやってくる。
「金利が安いから物件の投資利回りが多少低くても平気だろ」なんて安易に考えない方がいい。
多少修繕費がかかったとしても、投資利回りが高ければそのマイナス分をカバーすることができる。
でも、いくらここで僕が警鐘を鳴らしてもおそらくその声は多くの人の耳には届かないだろう、、、
何と言っても、今は史上空前の超低金利時代なんだ。
銀行も不動産にだったら積極的に融資してくれる時代なんだ。
どんなに物件のパフォーマンスが悪くても(投資利回りが低くても)、その分、金利が低かったらいいんじゃね?
そのような「イールドギャップ信仰」が大手を振って歩いている。
僕はこれからたくさんの人が行き詰まると思っています。
ましてやこのコロナです。
その影響は不動産投資の世界にも間違いなく及ぶことになるでしょう。
流行っているから、ベストセラーになっているから、みんなやってるから、etc・・・
そんな理由で、ある特定の投資法に飛びつくのはあまりにもキケンすぎるよ。
不動産投資にしても、本当に賃貸利回りが低くてもイールドギャップ(金利差)があればいいのかについて考えなきゃいけないよ。
投資信託にしても、本当にドルコスト平均法は損失を平均化してくれるのかについて考えなきゃいけないよ。
長期投資をやるにしても本当に手元にくる利益を30年も先に設定してもいいのかについて考えなきゃいけないよ。
分散投資をやるにしても、本当に資産を分散していれば暴落時にリスクをヘッジできるのかについて考えなきゃ家kないよ。
いろんなことを言う人がいるからね。
投資をやる人は、『見極める目』を持たなければならない。
世の中はすべて春夏秋冬のサイクルがある。
自分のお金をずっと市場の荒波の中に置きっぱなしにしたままにするということはその自然のサイクルに自分のお金をさらし、委ねるということ。
その間に冬は必ずやってくる。
もしかしたら2回かもしれない。
3回かもしれない・・・
"紙の資産"というのは『一つのカゴ』だということに最近気づいた。
だから僕は不動産所得とポートフォリオ所得と事業所得の3つのカゴに卵を入れようと思っている。
「平均上昇率は6%だ!」という言い方はマネー雑誌にもよく登場する。
それは『平均するとそうなる』ということ。
これから先そうなるというわけじゃない。
ちなみに札幌の年間平均気温は9度だけど、最低気温はマイナス10度を超える。
マイナス10度の時に薄手のパーカー1枚で過ごしたら凍えちゃうよ・・・
不動産投資は資産が一気に変動しない代わりに、株価の変動しだいで『一気に大儲け!』というような一攫千金ない。
インカムゲインをもらいながら、ゆっくりのんびり資産を形成してゆくスタイル。
いい物件なら30年・40年・50年間、安定的に家賃が得られる。
こういうのを本当の長期投資というのではないのかなと僕は思ってるよ。
いま、巷で人気の投資信託をドルコスト平均法で長期的に購入してゆくやり方が儲かると思ってる人は『長期的に見たらどうせゆるやかにあがってゆく』と信じて疑ってないみたいだね。
だけど、それは必ずそうなると決まったわけではないよね。
そんなわからないものに大金を突っ込んで大丈夫なのだろうか?
今までいろんな人を見てきて思うのだけれど、「みんなが言ってるから間違いないだろう」という理由だけで、非合理的な判断をしている人って多いような気がする。
その「みんなが言ってる」の『みんな』ってどういった人たちなのだろう?
投資や資産運用をやってる人たちは特に注意した方がいい。
本当にその人たちの意見に従って、大金を注ぎ込んでいいのかについてよくよく考えてから行動した方がいい。
ちなみに、多数派の意見に従ってることが正しいことなんだと錯覚することを社会心理学では『フォールス・コンセンサス(効果)』という。
スタンリー・キューブリックは『フルメタル・ジャケット』という映画でそのことを描いていますね。
情報化社会と資本主義が結びついた時、一体何が起きるだろう?
僕たちは歴史の転換期に立ち会っている。
膨大な情報の中から本当に価値のあるものを取捨選択できる能力を持とう。
トレンドに流されるのではなく、本当に儲かるものに投資しよう。
識別眼はこういう時にこそ試される。
本質を見抜こう。