サカモトハルキの哲学

経営者。投資家。不動産投資と株式投資やってます。趣味で詩も書いてます。5棟74室+月極P24台(2010年12月より法人化)。配当狙いの個別株投資。

映画『パラサイト 半地下の家族』レビュー

 

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すげぇ映画だった…

これは現代社会を生きるすべての人が『いま』観なければいけない映画だ。

やはり『ジョーカー』と同じテイストを感じた。

 

そして、ジャージャー・ラーメン食いたくなる。笑

 

でも僕はそこに「絶望」や「あきらめ」ではなく、『希望』を感じた。

特にあの長男クン。

すべては彼の“頭の良さ”からはじまったのです。

あの頭脳があればきっと道は開けると僕は思う。

 

上流階級の人たちのその“悪気のなさ”や“無邪気さ”。

それがいちばんムカつくんじゃい!

わかるわ〜笑

 

俺はソン・ガンホの気持ちが痛いほどよくわかるよ・・・

 

決してあからさまに差別するわけじゃないんだ。

だけど無意識に、何の悪気もなく、さらりと下々の人間たちを見下す上流階級の人たち。

だから、なおさら『違い』が際立ってしまう。

 

世間がそういう状態になってるのに、何なんだその白いジャケットは!笑

世間がそういう状態になってるのに、そういうものを企画しちゃう無神経さよ!笑

 

ソン・ガンホお父さんのあの絶望的な言葉が胸に刺さった。

でも、それと対をなすような長男クンの言葉は希望だったな。

 

あれはポン・ジュノからの若い世代へのメッセージだったと思う。

『ピンチは己のK.U.F.U.(工夫)で乗り越えろ』

『あきらめるな!』というメッセージね・・・

 

あの金持ち奥さんみたいなヒト、結構いるよね。

医者の奥さんとかに多いタイプ。笑

 

キャスティングがとにかく見事だった。

とくに奥さん役のチョ・ヨジョンがめちゃくちゃ可愛い!

 

もしこの映画が日本映画だったらチョ・ヨジョンさんが演じたお金持ち奥さんは誰がいいだろう?

個人的には鈴木京香が好きで適役だと思うんだけど、さすがに年齢が違いすぎる。

井川遥とかどうだろう。

 

これ、日本とも無縁の話じゃない。

 

お金持ちからしたたり落ちる「トリクルダウン」を期待してもダメだと思う。

彼らは“山の手”でホームパーティーするだけ。

下々のことなんか考えない。

やはり「ボトムアップ」でいかないと!

 

そのためには政府の力が必要だ。

 

『パラサイト(寄生する)』って言葉、なかなか意味深い。

貧乏な家族が金持ち家族にパラサイトする意味だけじゃない。

グローバル資本主義は貧乏な人にパラサイトする事で利益を上げている。

大企業のあの内部留保は低賃金や非正規雇用によって生み出されたものでもある。

 

この映画の裏テーマはアメリカだと思う。

あるいは「アメリカ的な考え方」と言ってもいい。

 

・金持ちお母さんは所々英語を話す

・娘に英語をマスターさせようとしている

・アメリカの大学の名前を出したら簡単に騙される

・「アメリカ製だから間違いないわ」というセリフ

 

金持ちお父さんの職業はIT企業の社長。

つまり、バリバリの『グローバリスト』『新自由主義者』なわけだ。

 

その優勝劣敗&自己責任のアメリカ的な考え方によって韓国は格差が広がった。

あの金持ち夫婦の異常とも思える『アメリカかぶれ』にはそういう意味が含まれていたような気がする。

 

ポン・ジュノは作品賞を受賞したけど、裏テーマとして明らかに『現代のアメリカ』への批判がある。

何と言ってもアメリカはトランプのような人が喝采を浴びるような国なのだ。

そして日本を含めて多くの人はそれがいいことだと思ってる。

 

そんな世界への批判を込めたのではないだろうか・・・

 

あの男の子はインディアンが大好きだ。

インディアンは『アメリカによって征服・侵略された人々』だ。

それはこのグローバル化が進む世界に生きる人々と呼応する。

 

さらに、そんな征服者たちに最後まで抵抗した『レジスタンス』でもある。

あの子はパパやママに抵抗していたんだ

 

ポン・ジュノは僕たちに無言のメッセージを送っている。

あの男の子の『インディアン』はその象徴だ。

 

『グエムル』も『スノーピアサー』のメッセージも同一のものだ。

「こんな世界に負けるな」「反旗をひるがえせ」というメッセージのように僕は思えました。

 

そして、あの『謎の石』の存在がまた素晴らしい!

あれは人間の業、欲望、学歴、二面性、etc・・・・いろんなことを象徴している。

そして、お母さんは元ハンマー投げの選手という設定。

 

終盤あの石がどういう活躍をするのか。

そして最終的にどうなるのか。

非常に興味深い存在だ。

 

本作の最重要アイテムである、あの謎の石。

あれは韓国では「お守り」みたいなものでスピリチュアルなものらしい。

要するにそれは実態のないもの。

 

ポン・ジュノは「現実から目を背けるな」と言ってるような気がする。

「現実逃避するな」というメッセージだと思った。

 

素晴らしすぎる!!

 

 

www.sankei.com

 

そして、おもしろいのがポン・ジュノがあの映画の中で「アメリカ的価値観」を映画的な技法を使って批判しているところ。

トランプはもちろんそんなことは知る由もない。

 

① スマホ(WiFiの電波のシークエンス含む)

② モールス信号

③ そしてトランシーバー

 

この映画の中で登場するこれらの通信機器の存在は非常に重要だ。

それは「何かを伝えよう」というメッセージであり、コミュニケーション手段であり、同時にSOSでもある!

 

あの男の子は両親と微妙に距離を置いているのはなぜか?

あのトランシーバーは征服者たち(欧米化、グローバル化など)によって居場所をなくしつつあるインディアンたち(善良な市民、普通の人々)からのSOSだったのでは…

彼は最初からすべてを把握していたのだ!

 

個人的にこの映画に出てくるような金持ち一家を知ってる。

彼らは本当に世の中のことに無関心だ。

いや、無関心というよりも眼中にない。

 

エルメスのバッグやアウディの車、子供の学習塾にことで頭がいっぱいなのだ。

下手したら山本太郎のことも知らないかもしれない。

 

彼らは世間が災害や震災などで避難所生活を送ってるなか、平気な顔してアウディでスーパーに乗りつけるような人たちだ。

白いジャケットを羽織ってね・・・

 

僕たちはそんな世界に生きている。

そして、そういう世界を良しとする政党に投票し続けている。

与党を支持するとはそういうことなのだ。

 

この映画のすごいところは金持ち家族がステレオタイプの「嫌な感じの金持ち家族」じゃないところ。

 

金持ち家族の奥さんが「いかにも」という感じの『ザマス』的な教育ママじゃないところも良かった。

『パラサイト』のあの金持ち奥さん、バレンシアガのバッグとか持ってそう。

全身シャネルとかのセンスのないカンジじゃないんだよ。

その洗練されたカンジがまた絶妙なんだよ。

 

そこが新しかった。

でも同時に、それが逆に残酷なところでもあるんだけどね。

 

ポン・ジュノ作品には必ず『なっ、なんだよ、その格好!?』という場面が出てくる。

その肉体性みたいなのも魅力だよね。

パラサイトにも笑っちゃうくらいびっくりするような格好が出てくるよね。笑

 

あの冒頭の貧乏お父さんのピザの箱を上手に組み立てることができないというシーンがすべてを物語っているような気がする。

あのピザ屋の店主が「あんたのせいで4分の1廃棄しなきゃいけないことになったじゃない…」と言う。

あれはケン・ローチ監督の『わたしはダニエル・ブレイク』を彷彿とさせる。

 

日本映画を観ていてイライラするのは「全部セリフで言っちゃう」ところ。

『ALWAYS 三丁目の夕日』とかそうだけど、登場人物の心情とか場面設定とか全部セリフで説明しちゃう。

 

本作はコンドームにしろ、石、インディアン、ピザの箱、etc・・・・何も説明してない。

『映像』で語っている。

 

日本映画の(特にメジャー級の作品)多くが登場人物たちにセリフで全部説明させる問題って、作り手側が「いちいち説明しないと観客は理解できないのではないか…」という不安感があるのかもしれない。

・・・ということは観客側のリテラシーとか理解力のなさも関係あるのかなぁ。

 

『韓国映画アカデミー』っていうのがあるんだね。

ポン・ジュノもそこで学んだ。

国がお金を出してきっちり映画の文法を学ばせている。

 

日本の緊縮財政の影響はこういうところにも出てるね。

日本は『教育』というものにお金を出したがらない。

「そんなものに頼らなくても自力でなんとかしろ」だもんね・・・

 

日本映画特有の「主人公がセリフで全部、説明しちゃう問題」について考えてる。

そこで、逆に「説明しない」監督を挙げてみた。

 

是枝裕和

北野武(特に初期)

呉美保

吉田大八

黒沢清

園子温

河瀬直美

塚本晋也

etc・・・

 

うん、こういう監督たちがいる限り日本映画はまだ大丈夫だ。

だけど日本のメジャーな作品の多くはセリフで全部、説明しようとするよね。

 

あれ、なんとかならないのかなぁ。

誰か現場で指摘したりできないものなのかなぁ。

 

結果的にはそれは日本映画の質を低下させて、やがて日本の国益にも影響する大問題だと思うんだけどなぁ。

 

『パラサイト』は何も説明していない。

セリフが決して少ないわけではない。

でもセリフで説明をしないんだ。

 

映画的技法で語ってゆく。

「いい映画」ってみんなそうだよね。

 

『ALWAYS三丁目の夕日』とかが典型的だけど。

「そんな路地裏でブツブツ独り言言ったり、大声出したりしたら、ただのへんな人になっちゃうよ!」と思わずツッコミを入れたくなる。

 

でもそういう日本映画、多いよね・・・

 

ポン・ジュノ監督がインタビューで『寝ても覚めても』のことを語っていて、「とくに主人公の女性が不安そうに防波堤越しの海を見つめるシーンが好きだ」と応えていた。

「あれは現代社会を生きる人の“不安”や“アイデンティティ・クライシス”をあらわしてる」と…

さすがだ

 

 

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本作を観て、「いいなぁ」「ある意味、羨ましいなぁ」と思えたのは貧乏な家族が(貧乏であるがゆえに)、みんなで助け合い、支え合ってること。

 

貧乏だからみんなで協力せざるを得ないんだけど決してバラバラじゃない。

 

『万引き家族』と同じ。

本当の家族の幸せってなんだろう?って考えちゃったよ。